1000テスラまでの超強磁場下での物性研究
小濱研究室では“磁場”を使った研究を展開しています。磁場というのは直接的に電子に作用するため、どのような物質でも磁場による影響を受けます。このため物性研究において、磁場を使った研究というのはかなり一般的であり、最も頻繁に使われる外場といえます。しかしながら磁場を定常的に発生するのは困難で、連続的に発生できる磁場の世界最高値は45テスラです。これ以上の磁場の発生には、瞬間的に高い磁場を発生するパルス磁場を使います。本研究室では、このパルス磁場を物性実験に応用し、45テスラをはるかに超えた、1000テスラまでの超強パルス磁場下での物性研究を展開しています。例えば最近の報道にあるように、東大物性研では1200テスラという、世界最高の室内磁場の発生に成功しています。本研究室ではこの世界最高磁場を用いた物性研究の新展開を推進しています。
パルス磁場下での精密な物性測定
パルス磁場下での研究は、データが粗かったり、そもそも簡単に測定できないことが非常に多いです。このため、これまでパルス磁場下では不可能であった物性測定技術を開発し、未踏の強磁場領域で物性研究を可能とさせる必要があります。これは強磁場で起こる物理現象を進めるためにも、非常に重要なウエイトを占めています。このため、世界の主たる強磁場施設(NHMFL(米国)、HZDR(独)、LNCMI(仏)、WHMFC(中国)らと競争、そして連携しながら、それと同規模の日本の強磁場施設である国際超強磁場科学研究施設の一員として、本研究室では測定技術の開拓を進めています。例えば本研究室では、世界の強磁場施設では不可能な60テスラまでの比熱やNMR測定、100テスラ以上での電気抵抗測定などが可能となっており、この領域での物性研究は他の追随を許していません(2019年4月現在)。物性研究所内外の研究室とも連携し、新しい技術の開拓を進めています。
パルス強磁場下での測定が拓く世界
物性研究において大切なのは現象を理解し、周りを驚かせるような新しい現象を発見することです。現在のところ注目しているのはFFLOの出現が期待される高温超伝導体であったり、量子振動測定とからめたフェルミオロジーを展開できるトポロジカル絶縁体、スピンネマテックなど新しい量子相を示すフラストレート磁性体であり、これらについての強磁場科学を推進しています。もちろん強磁場下で奇妙なふるまいを示す物質は他にも多岐にわたるため、上記の物質群以外にも様々な強磁場科学の展開を計画しています。